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 新名の部屋で2人でローソクを消したあと、新名母と弟にお裾分けと、帰りの遅い新名父のケーキにラップをかけて冷蔵庫にしまった分以外は、ほとんど不二山が一人でケーキを平らげた。満足してもらえたようだ。

「そうだ、明日なんだけど、おまえもうち来るか? 」
「えっ、明日って嵐さん家の誕生日会!? 」

 ケーキと夕食の後、約束どおり一緒に風呂に入ってちょっとだけエロいことをして、今は新名の部屋に不二山用に客用布団を敷いているところだ。
「でもそれって家族水入らずのパーティーなんじゃ……」
「パーティーなんて大袈裟なもんじゃねぇよ。菊の手入れ手伝って欲しいし」
「あ、そっちメインなわけね……」

 不二山の誕生日はちょうど菊の節句が近い。そして、不二山が丹精込めて育てている秋の菊が綺麗に咲き始める頃だ。去年もこの季節に「虫とか絶対無理だし! 」と抵抗したのに害虫取りに駆り出され、2人で庭先にしゃがんでピンセットでせっせとアブラムシを取り除き続けたことを思い出した。
「今年は調子に乗って鉢増やしすぎたからな。これからもおまえが手伝ってくれねぇと困る」
「これからも? 」
 念を押すように尋ねてみると、不二山にしては珍しく照れくさそうにうつむいた。
「……これからも。俺は卒業しちまうけど……誕生日ぐらいはうちに来いよ」
「ひっでぇ、誕生日だけしか行っちゃだめなの? 」
「別に……おまえが来たいんだったら来てもいいけど……」
 一緒に寝るのかと思っていたら不二山は今敷いた布団をめくって中へ潜り込んだ。そのままベッドの上の新名に背を向けるように、薄い掛け布団を頭が半分隠れるぐらい被ってしまう。
「俺には柔道しかねーし……これからは今まで以上に柔道ばっかになるからな。部活に行きさえすりゃ会えてた頃と同じようにはいかねーよ」
 布団の山の中からくぐもった声が聞こえた。それは新名も心配していたことだった。
(……嵐さんも不安なんかな……)
 何も言葉が出なくて、新名はホームの強みで不二山の布団をめくって背中側へ潜り込んでみた。
 怒られなかったのでそのまま不二山の背中に寄り添うようにくっつく。

「柔道部、引退しちまったら俺とおまえの繋がりって何だ? 柔道以外のことでおまえは何が面白いんか、俺にはわかんねーから」

 いつも自信満々な不二山が柄にもなく弱気な言葉を口にしたので、横臥していた新名はびっくりして上半身をガバッと起こした。
「……っ、そんなの! 嵐さんが楽しくなきゃオレだって楽しいわけないっしょ! だいたいオレが嵐さんの誘い断ったことある!? 全部嵐さんが一緒で楽しいからじゃん! 季節ごとの行事もイベントも全部嵐さんと迎えたいし、ジェットコースターやお化け屋敷じゃなかったら遊園地も付き合うし、天守閣以外なら城だって付き合うし……もちろん菊の世話だって手伝うし! 菊人形作れるぐらい!! 」
 背中を向けていた不二山の肩を掴んで仰向けにさせて、一気にまくし立てる。不二山はしばらくポカーンとしていたが、新名が言ったことを反芻するような間のあと、プッと吹き出した。
「菊人形っておまえ……ていうか、やっぱジェットコースターやお化け屋敷はダメなんか」
「うう……できれば……」
「俺は、おまえがビビッてんの見るのも楽しいけどな」
 ようやくいつもの調子に戻って不二山が『悪い笑顔』を浮かべたので、やっと新名も安心する。
「……やっぱドSだわアンタ……」
(でもよかった。別れ話とかじゃなくて)


「んじゃまぁ、明日に備えて寝ましょ」
「……一緒に寝るんか」
 電気消してと言われて、テーブルに置いてあった照明のリモコンに手を伸ばした不二山がわざと渋い顔を作った。
「え、だって嵐さんもう18だし? エロOKっしょ? 」
「おまえはまだだろ」
 ちゃっかり不二山と同じ布団に潜り込んできた新名に、表向きは嫌そうな顔をしながらもまるで場所を開けてくれるように不二山がちょっとだけ後ずさる。
「よく言うよ、昨日まで17でエロいことしてた人が」
「それもそうか」
 にじり寄ってピタッとくっついたら、くすぐったそうに笑って不二山の手が首に回ってくる。

「フフ……嵐さん誕生日オメデト。今年もよろしく。来年も再来年も一緒にお祝いしよーね」
 おでことおでこをくっつけて唇が触れそうな距離で囁くと、不二山は黙って手に持っていたリモコンで部屋の明かりを消した。
 




終わり

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あとがき
おめでとうございます!おめでとうございます!!
嵐さんの誕生日がおめでたすぎて意識不明です。ラスト暗転ですまん。あとはニーナに任せた!好きなだけベッタベタイッチャイチャラブラブエロエロしてください!!
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