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「ん、届いたぜ。ちょっと…滑るな……引っ張り出してみる」
「……っく…」
 人差し指と中指で挟んだ感触では、つるんとした丸い物体。そんなに大きいものではなさそうだ。滑って奥へ逃がしてしまわないように注意深く指先に力を入れ、じりじりと掻き出そうと試みた時だった。
「ん、んあっ! 待っ…!! 」
「うわ、ちょっ嵐さん! ケツ上げんなって」
 不二山がビクビクと肩を揺らして、背筋を伸ばしてしまった。
「ま…待て……新名…、これは…マズい……非常に…、よくない……」
 自分の拳の上に顔を伏せてしまって、熱っぽい息を吐きながら不二山が新名を制する。
(よくない、ってまさかアレかなー…後ろって気持ちイイって聞くしな……)
 分厚い柔道着の生地の上からでもわかる不二山の肩甲骨が、荒い呼吸に合わせて開閉する背中を見つめながら、新名はこみ上げてきた生唾を無意識に飲み込んだ。そこで、自分の使命を思い出す。
「ああほら、嵐さんが動くからもっと奥入っちゃったじゃん。ちょっと自分で息んでみるとか、そーゆーのできない? 」
「……さっきからやってんだけど…上手く、いかねーんだ」
 不二山がンッと息を詰めるたびにギュウ…と指が締めつけられる感覚はあるが、たしかに一向に肝心のものが出てくる気配がない。それよりも新名としては、いつまでもこんな狭くて柔らかくて温かいところに指をずっと入れていたら変な気分になってくるのが困る。
「た…体勢が悪いんじゃね? 」
「体勢? 」
「ほ、ほら、女性は寝たままや立ったままの姿勢では出産しにくいっていうしさぁ……」
「出産て。女と一緒にすんなよ」
 事務的に、機械的に、と努める新名の気持ちも知らないで、不二山が空気を読まずに突っかかってきた。
「アーヤダヤダ……人がせっかくオブラートに包んでんのに……だったら、和式トイレでしゃがむみたいなカッコでどうよ? 」
「……なるほどな」
 さっきよりは直接的な言い方に変えれば、天然だが合理的な一面もある不二山はすぐに新名の提案を認めたようだ。
「じゃあ支えるから……指抜くぜ? 」
「ん、んっ」
 できるだけ慎重に抜いたつもりだったが、不二山は自分の手の甲に顔を擦り付けるように肩を竦めた。
「ちょ、あんまエロい声出すなよ……」
 誰か聞いたら誤解されちゃうじゃん……と、半分本気でつぶやいたら「しょうがねーだろ、生理現象だ」と真顔で返された。
 正面から脇に手を差し入れ、ゆっくりと不二山が屈むのを手伝う。
「ふ、っあ……駄目だ、ちょっと…待」
 グーッと腰を低く落としたところで不二山の膝がブルブル震え、床に敷いた小さいお風呂マットの上にペタンと尻餅をついてしまった。
 新名のパーカーの肩口をギュッと握る手も震えている。
「無理そう? もっかい立つ? 立てる? 」
「…っ、無…理…っ! 」
 助けを求めるように新名にしがみつき、新名もそれに逆らわず引き寄せられてやったので、不二山は後ろのタイルに背を預ける格好になった。
「……わかった。じゃ、このままもう一回取り出してみよ? ちょっと…離して……」
 ギチギチに新名の服を握り締めている手を柔らかく包んで離させ、少し体を離す。もともと世話好きな性格の新名は、今回のことも最後まで付き合うつもりだった。
 
「ン……」
 離させられた手を後ろ手に床について、不二山が力なく背後の壁にもたれかかる。
(うわ……なんつーか……スッゲ……)
 もともと帯も巻いていない柔道着の上衣ははだけて腹筋が剥き出しになっており、そんな姿は普段の練習中で見慣れていたが、そこへ見慣れないものが見えた。
 この興奮が、他人のそんな戦闘態勢になった状態を初めて見たからなのか、涙目で震える不二山があまりにもレアだったからなのか、新名本人にもよく解らない。
「……あんま…見んな……」
「っ、ゴメ……」
(落ち着けオレッ! 相手は嵐さん! 男! お・と・こ! 今見ただろ!! 昇り龍みてーなパネェやつ! )
 不二山が顔を隠すように片腕を上げたのを見てよからぬ動悸がして、慌てて自分の頬をペチンと打ったら、慌てすぎて右手で叩いてしまい乾きかけたジェルで頬がヌルッとした。
「嵐さん……オレ、なんか変な気分……」
「俺はとっくに変な気分だ」
「……そーだけど」
 話の噛み合わなさに泣けてくる。いや、噛み合っていたらいたでブレーキをかける者がいなくなって困るのだが。
「嵐さん……もっかい指…入れるな……? 」
「……ん、」
 不二山はもう「いちいち断りを入れるな」と怒らなかった。
 
「ふぁ、っ……待っ」
「ちょっと我慢して。進めらんないっしょ……」
「っ、でも……」
 新名は、中で指が動かしやすいように上半身を近づける形で、不二山の開いた脚の間に膝立ちになっている。そうすると不二山が縋るものを求めて、目の前の新名の胸にギュウギュウにしがみつくのだ。
(ちょっと可愛い…ような気がしないでもない……)
 相手は嵐さんなのにな……困ったな……と溜息を吐きつつ、さっきよりだいぶん手の届くところへ降りてきている振動する根源を指で手前に掻き寄せることに努める。
(いや、嵐さんだから……だよな)
 いつも偉そうで意地悪で説教臭くて、まともにやり合ったら絶対に勝てない。そんな不二山が「新名、新名」と殊勝に自分の名を呼んで、涙目で胸に縋ってくるなんて普通に生活していたらまずあり得ない。
(オレは今、ものすごいチャンスを掴みかけてる……? )
 今なら不二山に勝てるのではないかと、そんなことを思った。
「ん……ん、っあ……」
「ほーらぁ、もう。エロい声出さないの」
「っ…く、」
 2本の指でしっかり挟めるところまで出てきたソレをゆっくりと手前に引き出す。
「新、名っ……も…早、く……っ」
「だーめ。ゆっくりしなきゃ、また奥に入っちゃうかもしれないじゃん? 何? ゆっくりだと何かマズいの? 感じちゃってんでしょ、嵐さーん」
「おま……覚えてろよ…っ…」
「あはは、ぜーんぜん怖くないし」
 実際「覚えてろ」などと凄んでも、そんな濡れた声で、新名の胸に甘えるように顔を擦り付けている不二山は恐れるに足りなかった。
「もーちょっと、だからな」
「ん、んンッ!! 」
 ゆっくり引き出して、頭の見えてきたそれを慎重に挟み直して一気に引っ張り出す。コロンと転がり出たのは長さ5センチほどのローターで、床に敷いていたマットと壁の隙間に転げ落ちてブブブブと振動を続けていた。それを拾い上げ繋ぎ目部分を持って捻ると、スイッチが切れたのかその機械はようやく沈黙した。
「……っ、は……」
 不二山は肩で息をしている。その腹から胸の下にかけて、粘度のある白い液体が飛び散っていた。
「……嵐さん…コレ何? 」
「……っ…」
 最初は見ないふりをしてあげるつもりだったのに、一度顔を出した内なる黒ニーナが退場しない。そんな新名を、まだ覚束ない手で柔道着を掻き合わせ不二山がキッと睨んだ。
「だから、そんな可愛い顔して睨んでも全然怖くないってば」
「うるさい。可愛くねえ」
「でもオレにお尻弄られてイッちゃったんじゃん、かーわいー…ふぎゃっ!? 」
 新名が調子に乗っていると、不意に股間に衝撃が走る。
「……あ、らしさん何……」
「おまえだって、俺で勃ってんじゃねぇか」
 腰で穿いていたカーゴパンツの布地越しに、ガッチリ不二山に握られていたのだった。
「あ…嵐さん……」
 カーッと頭に血が上って、思わずその不二山の手に擦りつけてしまう。そんな新名に、不二山が『悪い顔』をして、抑揚のない声で「かーわいー」と言った。
 
 
 

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